今までだったら、ここで会話が続くか、ベッドになだれ込む流れになるのに、今は、ただただ、しんとなる。
外で雨が降っていたことすら、忘れてしまいそうになった。
「まあ、それだけじゃなくて、失恋したお前見て、放っておけなかったのもホントだから」
「……うん」
「お前が立ち直って、マジな恋を見つけるまで、付き合い続けるつもりだった。
オレは、お前とマサキの関係みたいに重そうなのはムリだけど、お前は違うだろ?
こういう、ヤるだけの関係、お前には続かないだろって、初めから分かってたから、こうなって良かった。
めちゃくちゃホッとしてる」
「……なんか、サクっぽくないね」
「まあな」
本当はサクの言葉に胸を打たれたのに、私はそう返すことでしか、サクへの感謝を示せなかった。
「じゃ、帰るか。
服も乾いたしな」
サクは言い、立ち上がった。
私も、合わせるように立ち上がる。
手慣れたようにケータイ操作し、サクはその画面を私に見せた。
《夏川ミオの電話帳を、削除しますか?》
ためらいなく《YES》を選択し、サクは笑った。
「マサキと、幸せになれよ」


