ケータイ小説 『肌』 著:マサキ


……でも、分からなくもない。

体の関係になってからは忘れがちになっていたけど、1年の時、サクは友達想いな人だった。

きっと、今でもそれは同じ。


――…マサキと別れた直後、大学生活を送るかたわら、私は家に帰らないようにしていた。

家には、両親と過ごした思い出より、マサキと幸せな時間を過ごしたイメージの方が強かったからだ。

そんな場所にいたら、マサキを思い出して狂ってしまう……。

夜になると、私は、ネットカフェやカプセルホテルに泊まる日々を過ごし、生活費が厳しくなったら、サークルの部室で寝ていた。

サークル部屋には、先輩達が購入した仮眠用ベッドや、部費で買ったインスタントラーメン、湯を沸かすケトルなどが常備されている。


サクと初めてエッチをしたのは、誰もいない夜の部室だった。

なんとなく話しているうちに恋愛相談をしていて、気がついたらキスされて、裸で絡み合っていた。

「寂しいなら、いつでも相手してやる」


1年の頃、あんな不摂生な暮らしをしていなかったら、サクとはこんな関係になっていなかったかもしれない。

英語の授業でしか関わりのなかったサクは、私が夜、家に帰らないのを心配して、どこまでも付き合ってくれた。

お金のある時はちょっと豪華なレストランに連れていってくれた。

「付き合ってもいないのに、ここまでしてくれなくていいよ」

遠慮すると、サクは決まってこう返した。

「彼女いないからこそ、できることだし」