本当に、わかってる?
一抹(いちまつ)の不安を抱きつつ、サクにうながされるまま、部屋を取った。
室内に入るまでずっと、マサキの肌に触れた瞬間のことが頭から離れなかったけど、
「シャワー、浴びてこれば?」
サクの言葉に、私の意識はずぶ濡れになった自分に向く。
あと、サクらしくない振る舞いも変だった。
いつもなら、部屋に入るなり抱きついてきたのに、今は、ソファーに座ってタバコに火をつけている。
おずおずと浴室に引っ込み、私は着ているものを脱いだ。
タイルの冷たさを足裏に感じつつシャワーを浴び、壁に取り付けられた全身鏡を見る。
艶のある肌。
マシュマロみたいな柔らかい胸元には、赤いアザがついている。
この前、マサキが唇でつけてくれたもの……。
今後、この体は、マサキとつながることはできない。
そう思うと、涙が出た。
抱かれないことが悲しいんじゃない。
この4年、マサキがどんな想いをしてきたのかと想像するだけで、身を裂かれそうな想いになる……。
『小説は、マサキにとっての逃げ場だったんだ』
ヒロの言葉を思い出さずにはいられなかった。


