『栄……!?
やっぱり外にいたか。
……よくわかんねぇけど、今ちょうど名駅のそばにいるし、地下鉄でそっち行くわ。
動くなよ!?』
サクは、名古屋駅からここに向かうと言うと、こっちの返事も聞かず電話を切ってしまった。
私にサヨナラっぽいことを言われ、動揺したんだと思う。
サクなら「あっそ、じゃあな」って、すんなり離れてくれると予想してたから、こんな展開は意外過ぎた。
サクの言い付けを守り、地下鉄乗り場に続く出口の屋根で雨宿りをしつつ、彼を待った。
こんな時すら、偶然、マサキに通りかかってほしいと、甘い夢を見てしまう。
恋愛ドラマ的シチュエーションは期待通りに訪れず、数十分後、サクがきた。
地下鉄以外の場所で傘をささなかったのか、サクの髪と肩は少し濡れていた。
「すっげ! ずぶ濡れじゃん!
風邪引くって!」
サクは私の肩に手を回し、いつもそうしてきたように、視界に入るラブホテルに足を向けた。
「サク! 私、もう、そういうことはしない。
サクと会うのも、これが最後だから……!」
「わかってるって!」
おちゃらけた口調。
でも、サクの横顔は、いつになく真剣だった。


