ケータイ小説 『肌』 著:マサキ


夏の終わり。

9月下旬。

夜の雨は意外に冷たかった。

少し前なら、水の温度を気持ち良く感じたんだろうけど、今は、この雨粒のひとつひとつが、私の悲しみを膨らませた。


とりあえず、家に帰ろう……。

ああ、こんな姿で電車には乗れないな。

歩いて帰ったら、どのくらいかかるだろう。

途中に、自転車をレンタルしてくれる店とかないかな。


うつむいて、繁華街を通り過ぎる。

傘を差した通行人が、怪物にでも出くわしたかのように私を見て、悲鳴に近い驚きの声をあげていた。


「さきほど降り出した雨は、今晩中続きそうです」

テレビの中から、気象予報士の声が告げた。

個人営業の電気屋が、歩道に向けて大音量のテレビを設置しているのだ。

こんなんして、店の宣伝効果などあるのだろうかと疑問視しながら、私は電車のレール脇に沿って伸びる道を歩いた。

こうすれば、道が分からなくてもいつかは家に着けるだろう。