ケータイ小説 『肌』 著:マサキ


私に人を見る目がないと言われたらそれまでだけど、中学時代、ヤマは本当にいい子だった。

ヤマは、いつも教室の隅でひっそり読書しているような物静かなタイプで、表立って自己主張したり、正義感をあらわにするような子ではなかったけど、影で、みんなを支えていた。

男子にからかわれて落ち込んでいる女子を優しい言葉で元気づけたり、昼休みにボール遊びをしててケガをした男子を保健室に連れていって手当てしてあげたりして。

一部のクラスメイトから、『女神』なんてあだ名をつけられていたくらいだ。


私が体調を崩した雨の日。

ヤマは自分の部活を休み、顧問(こもん)の先生に怒られながらも、ウチにお見舞いに来てくれた。

私の両親が留守だからと、おかゆやオレンジジュースまで手作りしてくれて……。

雨の音を耳にしながら食べたあの味は、これからも忘れないと思う。

インスタント品とは違い、人の優しさがしみた。


高校生になってからパッタリ会うことはなくなってしまったけど、ヤマは大切な友達に変わりなかった。

どうして、こんなことになってしまったんだろう……?

一人で抱えるにはつらすぎる現実だった。

こんなこと、誰にも話せない。