もちろん、松美さんの言うことや、その商法にハマったヤマの気持ちも分かる。
女に生まれた以上、できるだけ美しくいたい。
肌荒れしたら気分が滅入るし、髪がパサつくと、人と会うのも嫌になることがある。
分かるし、惹かれる部分はたくさんあるけれど、私は……。
「私は、そういうの、興味ありません」
席を立ち、私は言った。
「ヤマ、ごめんね。
良い話だと思うけど、もしそういうのをやっても、私は、友達や近所の人に商品の購入を勧めたりはできない。
それだと、稼ぎにならないじゃん?
だったら、多少苦労しても就活がんばるよ」
彼女達に背を向け、出入口に向かおうとした時、ヤマの低い声が響いた。
「ミオは損してるよ。
そうやって時間が経つのをやり過ごして、何の魅力もないただのオバサンになっちゃうんだね。
一緒に夢を追いかけられなくて残念だよ」
――…ヤマの言葉を無視し、私は早足でファミレスを後にした。
頭は熱くなっていて、歩くたびにイラ立ちが増す。
ヤマは、私のことを友達とは思ってなかったんだ……。
それどころか、自分の利益を上げるために私や私の人間関係を利用しようとした。
私にマルチ商法の知識がなかったら、完全に、ヤマの踏み台にされていた。
変な稼ぎ方にハマって、人との間に築かれた信頼関係を簡単に失っていた。


