私がそうして考えている間、松美さんはあらゆる言葉で私を説得しようとしてきた。
自分の左手薬指にはめた高級ダイヤの指輪をちらつかせ、
「同じ会社の人と結婚した時に、もらった物なの」
と言ってみたり、学生時代から付き合いのある女友達との集合写真を見せてきて、
「みんな綺麗で、年齢より若く見えるでしょう?
私達、これでも35過ぎてるの。
でも、ウチの会社の水を毎日飲めば、肌を若く保てるって評判でね。
ミオちゃんも、今のまま若い姿でいたいと思わない?」
……ヤマも、こうやってこの人に騙されたのかな。
ヤマと松美さんの関係がどのくらい深いかなんて分からないけど、ただの大学の先輩後輩の関係じゃないのはたしかだ。
信頼する人からこんなことを言われたら、誰だって素直に聞いてしまうだろう。
長々と、甘い誘い文句が耳に響く。
そのどれもが、私の心をすり抜けていった。


