ケータイ小説 『肌』 著:マサキ


松美さんとヤマの話を聞いて、だいたい見えてきた。

これは、いわゆるマルチ商法……。

松美さんが働いている会社の製品。

鍋でも何でもいい。

ヤマが、自分で購入した販売用の商品(今回の場合は鍋)を私に売ることができたら、ヤマに収入が入る……というシステムだ。


マルチ商法は、松美さんのように、上から見ている立場ならかなり儲かりウッハウハな稼ぎ口になるかもしれないけど、ヤマのような使いっぱしりは損をする仕組みになっている。

自分のお金で商品を仕入れても、売れなかったら意味がないし、収入もゼロ。

だから、自然と、友人知人から売り込む形になる。

おそらくヤマは、松美さんから買った商品(鍋)が売れなくて困り、私に買ってもらうべく、突然会いたいと言いだしたんだ。

松美さんを連れてきたのも、私を丸め込み、ここから逃がさないため……。

売れ行きの悪いヤマにあきれた松美さんが、自ら同席を望んだ可能性もある。

ヤマが商品を捌(さば)いてくれないと、松美さんのリッチライフも崩れ去るわけだから、必死になるのもうなずける。