あからさまに怪しいけど、ヤマの話に惹かれないと言えばウソになる。
就活がうまくいく自信もない。
同窓会の時、周りはみんな、理想の将来像を描いて、実現しようと頑張ってるみたいだった。
多く稼げなくてもいい、自立するだけのお金が手に入るのなら……。
「どんな仕事なの?」
「……まずは、鍋を買ってくれない?
ミオ、高校の時、料理にハマってるって言ってたよね」
「鍋っ?」
なぜ、鍋!?
私の疑問に答えたのは、松美さんだった。
「ウチの会社の製品なの。試してみて?
今なら、京子ちゃんのお友達ということで、特別に割引するし」
それから数分間、鍋の性能について延々と説明された。
私の家にある鍋の話をしたら、真っ向から否定されて嫌な気分になった。
「○○○社は、元々、畑違いの事業をしてたんだよ」
などと、様々な点から他社製品を悪く言い、自社製品の美点をあげる。
「ミオちゃんも、ウチの鍋を使ってみたら、絶対に気に入ると思うの。
鍋だけじゃなく、いろんな商品があるんだよ。
ミネラルウォーターに、サプリメント。
もし気に入ってくれたら、ミオちゃんのお友達やご家族、近所の人に、商品の購入を勧めてほしいんだ」


