「実は私も、松美さんの手伝いをしてけっこう稼いでるんだ。
大学卒業したら、本格的に“ここ”で働くつもり」
松美さんと目を合わせ、ヤマは微笑む。
「ミオだけじゃなく、普通に就職してる人は、みんな損してるよ。
私達と一緒に、稼ごう?」
「就職に損とか得とかないよ。
働かなきゃ、暮らしていけないもん。
だからみんな、就職したいんだよ」
楽に稼げるほど、世の中は甘くない。
私も、今は両親の稼ぎで生活しているけど、卒業後も就職できていなかったら、バイトしてでも自活するつもりだ。
マサキやヒロの話から世の中ってやつを実感した私は、ちょっとだけヤマに意見してみせたが、それはアッサリ否定されてしまった。
「こう言ったら悪いけど、ミオの考え方は古いよ。
必ずしも『労働時間イコール給与』だなんて言えない。
就職したって、神経すり減らしてボーナス残業しなきゃならなくなる場合だって多いよ。
将来の可能性は、極端に狭まる。
そんなの、私達からしたらナンセンス」
私達、とは、松美さん&ヤマのペアのことだろう。
ヤマはイキイキしているし、饒舌(じょうぜつ)だ。


