ケータイ小説 『肌』 著:マサキ


なぜ。どうして。

私の疑問が解消されないうちに、マサキはこの土地からいなくなった。


これは、後から、同じ大学にいるマサキの友達に聞いた話。

彼は、私に別れを告げた後、家族と一緒にどこかへ引っ越したそうだ。

マサキの友達が、連絡の取れない彼を心配し家に押しかけたところ、門には《売家》と書かれた札がかけられていたそうだ。

引っ越し先は不明。


マサキは誰にも相談せず大学を中退し、自分と関わりを持った人達に何も告げず、姿をくらました。

私だけでなく、大学にいたマサキの友達数人も、ひどく悲しんでいた。


私を含む多くの人に謎を残したマサキ。

彼は、今頃どこで何をしているのだろう。



――…回想していると、電車は自宅の最寄駅についた。

いつもと変わらない、雑然とした夕暮れのホーム。

失恋の痛みはこの数年で和らいだけど、その後のマサキを知らないことに対する寂しさは、日毎に膨らむばかり。


だいだい色の空が、私の心情と重なった。

もう、夏なんだな……。