ケータイ小説 『肌』 著:マサキ


マサキに引っ張られるがまま繁華街を抜け、ビルの連立する裏通りにやってきた。

灰色のコンクリートと、数十メートル感覚に立つイチョウの木が、青い外灯のせいで幻想的に見えた。


昼間は人があふれる交差点にも、今は、私達の姿しかない。

そこまで来ても、マサキは私の手を離そうとせず、赤信号の横断歩道で立ち止まり、ただ、前を見ていた。

高校の時は、渡れそうなタイミングでしょっちゅう信号無視をしていたのに。

慎重なマサキが、なんだかオトナに見える。


「私達、今は付き合ってなんかいないのに、手、つないだままでいいの?」

マサキの気持ちをたしかめたくて、そんなことを尋ねた。

「いい。つないでて?」

マサキはやっと、まっすぐこっちを見てくれた。

やっぱり、変わらない。

困ったように笑う顔。

手のぬくもり。

指先の感触。


マサキだ。


私はいま、マサキと手をつなげる距離にいるんだ……。