駅まで、歩くとまだまだかかる。
「そんなこと言わずにさ~」
うっとうしさを越えて、男のしつこさに恐怖心が湧いた。
どうしたら逃げられるのか、分からない……。
助けてくれたのは、意外にも女の人の声だった。
「ナンパなら、他でやってくんない?」
「アサミ……!」
私が店を出て行った後、すぐに追いかけてきてくれたのだろうか。
おろおろする男を見て、アサミは言った。
「気をつけて帰りなよ、バイバーイ!」
私の腕を引っ張り、アサミはどんどん、店の方向に歩いていく。
マサキと沙織ちゃんが話している場に、戻りたくない。
「ありがと、アサミ。
今度こそ無事に帰るから……」
「勝手に出ていかないでね!
みんなビックリしてたよ。
マサキも心配してる」
「…………」
「さっきは……。店に着く前は、ごめん……」
アサミは立ち止まり、なぜか謝ってくる。
「行きの電車の中で、あたし、自分の意見ミオに押し付けてた……。
ミオの幸せを思ってそうしたんだけど、あんなの間違ってた。
あたしは、ミオが望むことを応援したい。
マサキとヨリを戻すのがミオの幸せっていうのなら、あたしもそれがいちばん嬉しいから」


