「ああ……。でも……」
マサキは誘いに乗るのをためらい、横にいる私を気にした。
何で、いま、私を見るの?
期待しそうになる。
本音を無視し、私は財布から三千円取り出すと、興奮した気持ちを鎮(しず)めるように、そっとテーブルに置いた。
「それ、私もこの前彼氏と観たけど、面白かったよ。
迷ってるなら、観に行った方がいい!」
マサキやみんなの返事を待たず、そう言いながら笑顔で席を立ち、私は早足で店を出た。
同窓会中、サクのことを恋人だと勘違いしていたアサミが、みんなの前で私に彼氏がいると言った。
それが、こんな形で役立つなんて……。
沙織ちゃんは、マサキの小説に登場する「M」が私だなんて、みじんも思ってないだろう。
これでいいんだ。
どうせ、期待したところでマサキとは付き合えない。
ヒロだけじゃなく、アサミまでもが反対してるんだから、致命的……。
なのにヒロは、賛成した。
マサキが、沙織ちゃんと仲良くなることに。
だったら、そうなればいい。
私の気持ちなんか無視で小説書いて、人気者になって、違うコのことを好きになればいい。
そんなの、私が好きになったマサキじゃないんだから、こっちから願い下げだよ……。


