「あのコは、先輩の妹で、沙織(さおり)ちゃんていうんだけど」
奈良さんの横にいたバイトの女の子を見て、ヒロが言った。
「沙織ちゃんも、マサキのこと好きなんだって!」
「へえ! じゃあ、兄妹そろってマサキのファンなんだ」
アサミは嬉しそうに目を見開いてみせる。
「マサキに会えて喜んでたよ、二人とも」
「ファンに会いたがられるなんて、マサキはもう、立派な作家大先生だね!
20代にして兼業するなんてなぁ。
マサキがそんな男になるなんて、あたし、高校の時は想像もしてなかったよ」
アサミが面白そうにマサキを見ると、
「お前ら、楽しんでんだろ」
二人の冷やかしが照れくさいのか、マサキは無愛想にから揚げを頬張った。
ヒロとアサミは、私とマサキの関係がなかったもののように、私達の話を避けている。
昔はいちばん安心できる顔ぶれだったのに、今はこんなにも息苦しい。
もし、私とマサキがただの同級生だったら、この場で私も、マサキの小説のことを喜んであげられたのにね――。


