私達が来る前まで、会話を楽しんでいたかもしれないヒロとマサキ。
今は二人とも、メニューを見たり、自分の注文した飲み物を口にするだけ。
やっぱり、帰ろう……。
マサキの小説を読んだところで、現実は何も変わらないんだ。
マサキの想いを知ったところで、マサキにその気が無いのにやり直すのは無理。
よく考えたら、小説に書かれているのは、マサキの過去の気持ちだけ。
今、私のことをどう思っているかは、分からない。
邪魔してごめん。
帰るね。
言いかけた時、アサミが口を開いた。
「今の人が、ヒロの大学の先輩?」
「うん、奈良先輩っていうんだ。
俺が1年の時、あの人は4年でさ。
奈良先輩が卒業した後も、時々会って、色々しゃべってる」
ヒロはやけに素直な反応をした。
彼は彼で、この空気に耐えられなかったのかもしれない。
私も、すがるようにアサミを見る。


