ケータイ小説 『肌』 著:マサキ


駅に着くと、サクとはホームで別れた。

彼とは、家の方向も乗る電車も違う。


目的の電車はすでに到着し、発車待ちしているところだった。

もっとも空いてそうな車両に乗り込み、座る席を探したが、帰宅ラッシュなのか、混み合っていて座れなかった。

満員に近いかも。

仕方なく出入口付近を陣取り手すりにつかまると、視線の動きだけで周囲を見た。

優先席に座るお年寄り。

スーツ姿のサラリーマン。

母親と手をつないだ小学生の男の子。

制服を着た女子高生の集団。

それぞれの声で、車内は意外とうるさかった。


私とそう歳の変わらなさそうなOLもいる。

私も、来年の今頃には、あの女性みたいに満員電車にもまれながら帰宅する日々を送っているのだろうか。

スーツを着て、どこかの会社でパソコンを打ったり、書類をコピーしたり、偉い人にお茶を出していたりするんだろうか。


就活が行き詰まっている今の私にとって、働いている女性の姿を見るのはつらいことだ。


先月も、面接した会社から不採用メールが届いた。

それが一度や二度ならまだ頑張ろうと思えるけど、去年の秋から就活を始めて、もう、60社以上から不採用通知を受けている。

こう何度も落とされると、自分自身を否定されているような気がした……。


自慢じゃないけど、私の通う大学は全国的にも優秀だと有名で、受験に受かるのはものすごく大変だった。

将来を見越して、頑張ったんだ。

でも、全く意味なし。

よく、大卒は就職に有利ってニュースとかで言ってるけど、全然、そんなことはない。

企業は、学歴じゃなく個人を見てる――。