Raindrop~Mikoto side

深い森を彷彿とさせる静かな瞳と目が合う。


──誰から。

一瞬、その思いが過ぎったけれど、私の婚約のことはメディアでも取り扱っていたし、律花さんも知っていることだ。

いずれは分かることだった。

……和音くんには知られたくないと、思っていたけれど。

「……ええ」

また俯いて、和音くんから目を逸らす。

そんな私に、静かに、穏やかに言葉がかけられる。

「おめでとうございます」


思わず顔を上げた。

そのときにはもう、和音くんは肩に構えたヴァイオリンに視線を落としていて、視線が合うことはなかった。


彼の『おめでとう』が胸の奥まで突き刺さる。

鋭いナイフで抉られたみたいに、痛い。

祝福の言葉がこんなに痛いなんて……知らなかった。

グッと唇を噛み締めて、静かに演奏を始める和音くんを見守る。


『エストレリータ─小さな星─』。

作曲家ポンセが亡き愛妻へ向けて作った曲は、美しい夜空で瞬く小さな星たちの囁き声に包まれる、夢のような世界。