Raindrop~Mikoto side

土曜日のレッスン日。

花音ちゃん、拓斗くんのレッスンはなんとか平静を装っていつも通りに出来た。

でも、そのあとの和音くんとは、もう視線すら合わせられなくて。

「……宜しくお願いします」

そう挨拶をされても、ピアノの鍵盤に落とした目を上げることは出来なかった。

「それじゃあ、今日は先週言っていた『エストレリータ』を」

「はい」

視線を合わせることなくそう会話をし、和音くんの準備が終わるのを待つ。

静かに流れる沈黙が痛い。

同じ空間にいるというだけで苦しい。

……まさか教え子にこんな感情を抱くことになるなんて、思いもしなかったけれど。

それでもレッスンだけは集中して、自分の役割を果たさなくてはならない。

気づかれないように深呼吸を繰り返して気持ちを整えていると。

「……ご結婚されるんですね」

そんな言葉をかけられ、思わず顔を上げた。