いつかの君と握手

「う、うそ! ここにいるんでしょ!? 失礼しますっ」

「ちょ、待てよ、比奈子!」

「急に入ってこないでよっ」


え。
まじ、すか?
ヤバい。
押入れ開けられたらアウトじゃん!

どすどすという足音が近づいてくる。
どうしよう!


「ミャオ。こっち」


すい、とイノリが動いた。


「え? イノリ、どこ?」

「こっち。ここ!」


カタンと音がして、あたしが触れていたはずのイノリの体がなくなった。
見渡すが、まだ暗闇に慣れていないせいでどこに行ったのかわからない。
入る前に見た感じだと、広い空間ではないはずなのに。

あれれ? どこ?

戸惑っていると手を引かれて、さっきまで存在しなかったはずの空間に導かれた。


「な、ここ、どうなってんの」

「し。しずかにして」


あたしを奥へと押しやったイノリが、再び何かを動かす音がした。


「祈くーん? でてきなさーい?」


がら、と襖を開ける音がして、


「隠れるなんてよくないよお? お父さんに言いつけますよー」


間延びした声に、とすとすと歩く音。
ヤバい。もうそこまで来てる!
せめてイノリを隠そうとぎゅ、と抱きしめた。


「うーん、と。ここかな? 狭い部屋なんだから、すぐ分かるんだからねえ」


勢いよく、押入れの開く音。
差し込んでくるはずの光から庇おうと目を閉じた。


「あ、れ? いない……」


呆然としたような比奈子の声がした。

え? と閉じていた目をこわごわと開ける。
予想は外れ、あたしたちの前の襖は閉じたままだった。

どういうこと?


「やだ、なんで? ここに絶対いると思ったのに!」


比奈子の声がする。
あたしたちから少し離れたところで、だ。


「……祈、見つかりましたかね、不法侵入の比奈子サン?」


やはり少し離れたところから、三津の声がした。