やっべー。こえー、と言いつつ、大げさに震えてみせると、イノリが声をあげて笑った。
「ホントにぃ? 信じらんないよ」
「本当だって。新しい父ちゃんだって、きちんとイノリに会ったのって初めてだろ? 絶対こんな感じだったって」
再びぶるぶるしてみせると、体を曲げて笑う。
「あはは、もう、お腹痛くなっちゃうから、やめて」
「あたしはやりすぎかもしんないけどさ、父ちゃん、どうしていいのかわかんなかったんだよ。
イノリみたいなかわいい子にさ、『父さん』なんて言われたらどきどきすんじゃん」
「そうなのかなあ。って、ぼく『かわいい』じゃないよ!」
「あ、そっか。男だもんな。かっこいい、だ。ごめんごめん」
かわいいは誉め言葉にならないのか。
しかし、かわいいなあ、もう。
気持ちよさそうに眉を下げ、手の平を受け止める顔を見ながら、頭をぐりんぐりん撫でてやった。
「――――あ! あそこの標識! 『I小学校』だって。イノリの通ってたところじゃない?」
住宅地らしきところに入り、ぐるぐる歩きまわっていると、探していた校名を見つけた。
やった、と思えば、遠くからチャイムの音が聞こえた。
近い。近いぞ。
「どう、イノリ? この道、見覚えはある?」
「うーん、よくわかんない」
「そか。イノリの家はこっち側じゃないってことか。やっぱり学校まで行ったほうがいいな」
音がした方向へ歩き出す。少し行くと、ランドセルを背負った子どもたちとすれ違った。
どうやら授業は終わったらしい。
「イノリー。友だちに会えるかもしれないよ?」
「会えたら嬉しいな。でも、今は父さんに会いたいや」
えへへ、と笑う。
もう少ししたら父親に会えるんだ、っていう期待の顔だ。
いたらいいなあ、加賀父。
いて欲しいなあ。
この笑顔が曇るの、見たくないしなあ。
すれ違う小学生の姿が増える。
大きな洋風の家を通り過ぎ、右に曲がると、クリーム色の校舎が見えた。
「あ! あった!」
「ああー。ぼくの行ってた学校だあ」
イノリが歓喜の声をあげる。
やった、この学校で間違いなかったんだ。
「ホントにぃ? 信じらんないよ」
「本当だって。新しい父ちゃんだって、きちんとイノリに会ったのって初めてだろ? 絶対こんな感じだったって」
再びぶるぶるしてみせると、体を曲げて笑う。
「あはは、もう、お腹痛くなっちゃうから、やめて」
「あたしはやりすぎかもしんないけどさ、父ちゃん、どうしていいのかわかんなかったんだよ。
イノリみたいなかわいい子にさ、『父さん』なんて言われたらどきどきすんじゃん」
「そうなのかなあ。って、ぼく『かわいい』じゃないよ!」
「あ、そっか。男だもんな。かっこいい、だ。ごめんごめん」
かわいいは誉め言葉にならないのか。
しかし、かわいいなあ、もう。
気持ちよさそうに眉を下げ、手の平を受け止める顔を見ながら、頭をぐりんぐりん撫でてやった。
「――――あ! あそこの標識! 『I小学校』だって。イノリの通ってたところじゃない?」
住宅地らしきところに入り、ぐるぐる歩きまわっていると、探していた校名を見つけた。
やった、と思えば、遠くからチャイムの音が聞こえた。
近い。近いぞ。
「どう、イノリ? この道、見覚えはある?」
「うーん、よくわかんない」
「そか。イノリの家はこっち側じゃないってことか。やっぱり学校まで行ったほうがいいな」
音がした方向へ歩き出す。少し行くと、ランドセルを背負った子どもたちとすれ違った。
どうやら授業は終わったらしい。
「イノリー。友だちに会えるかもしれないよ?」
「会えたら嬉しいな。でも、今は父さんに会いたいや」
えへへ、と笑う。
もう少ししたら父親に会えるんだ、っていう期待の顔だ。
いたらいいなあ、加賀父。
いて欲しいなあ。
この笑顔が曇るの、見たくないしなあ。
すれ違う小学生の姿が増える。
大きな洋風の家を通り過ぎ、右に曲がると、クリーム色の校舎が見えた。
「あ! あった!」
「ああー。ぼくの行ってた学校だあ」
イノリが歓喜の声をあげる。
やった、この学校で間違いなかったんだ。



