「オレは誰よりもミャオがいい。それでもういいだろ?」


イノリの顔が滲む。
我慢が出来ない。涙が勝手に出てくる。
頬に添えられたイノリの手に、自分の手を重ねた。


「イノリに会えて、よかった……」


心から、思う。
あの時。あの場所で。
君に出会えて、よかった。

時を超えてまで出会った意味なんて今も分からないけど。
巡り合えたことをただ、感謝したい。


「俺も、一緒」


ふ、とイノリの顔が近づいた。
今度は、ゆっくりと。
あたしはそれを、瞳をそっと閉じることで迎えた。

柔らかく触れる唇。
吐息を交換するように、鳥が睦むように、啄みを繰り返した。


「……俺のこと、好き?」


吐息の合間に、囁かれた。


「……え?」

「聞きたい。一回でいい、言って?」


熱に浮かされていた頭が、羞恥を知らせる。
けれど、それよりも早く口が動いた。


「すき」


イノリの目を見て、はっきりと伝える。
そうしたら、いつかの少年と同じ、幸福に満たされた笑顔と共に、息もできなくなるほどの抱擁が与えられた。



たくさんのキスを降らせた後、イノリが言った。


あの出会いは必然だった。
俺はミャオに、ミャオは俺に会って、好きになった。


いつかの君と出会った理由は、それだけで充分だ。






    了