ひいいいいいいいい!
ち、近すぎじゃないのかこれ!
イノリが入ってくることなどまずないだろうが、それでも体を深く沈めた。


「あのさ」

「は、はい!?」

「あとで、ゆっくり話せる?」

「へ、へ?」

「話したいんだけど」


思えば、さっき加賀父の登場で話がうやむやというか打ち切りになっちゃったもんな。
短く承諾の返事をすると、イノリは「じゃああとで」と言って出て行った。


「ふ、ふうううう……」


なんか、緊張したと言うか、どきどきした。
好きとか気付いてしまったせいか、無駄に意識してしまう。

イノリを意識、か。
うーむ、しばらく小学生のころに戻ってくれないかなー。
あのちっさくて可愛いイノリなら、抱っこしてモフモフして撫で撫でぐりぐりできるのに。
好きとか言われても、今ならあたしもよー、うふふー、とか応え……応えられるのか?
いや、イノリ(小)なら、言う。言える。

だが、あたしの前にいるのはでかイノリなわけだ。


「うー……む」


鼻の上までお湯に浸かり、唸る。
くぷくぷ、と水泡が音を立てて消えた。