いつかの君と握手

耳元で、問われた。


「ふ、ふへぇ!?」


そ、そんなダイレクトに訊くか、普通!?

もっとこう、ソフトに訊けよ!
答え辛いじゃん!


「え、ええと、その」

「好きでもなきゃそんな無謀な真似しねーと、俺は思う。どうなんだ?」

「ああああああの、だな、その」


ひー!
ど、どうしたらいいんだ。
こんなの急展開すぎだろ!

ていうか、今のあたしって、回答求められてる?
回答ってことは、あれか!? そうです好きですって言えって?
そんなこと言ったら顔面爆発しそうなんですけど!

でででででも、違うなんて言いたくないし、
だからってハイソウデスなんてぇぇぇぇぇ!!


「返事しないなら、そういう風に受け取るけど」


混乱したあたしを抱きしめたままのイノリが言った。


「へ? へええええええぇえあぁぁっ?」


「叫ぶな。耳痛ぇ。だから、勝手にそういう風に受け取っていいのかって聞いてるんだ。
返事できないなら、頷け。俺のこと好きだってことで、いいのか?」


う、頷けばいいんだな!? それで伝わるんだな!?
了解したあたしは、せめてはっきりと伝わるようにぶんぶんと頷いた。

だってだって、言えねえよ。好きですなんてそんな言葉、本人目の前にしてどのツラ下げて言えってんだ。
こちとら慎ましやかな日本人なんだっつの。
愛情表現ってのは『月が綺麗ですね』が最上級なんだよ!

しかし、兎にも角にも、必死の想いは伝わったらしい。
抱きしめていたイノリの腕に、ぎゅうと新たな力が籠もった。


「……嘘じゃねえ、よな?」

「嘘じゃない! 嘘じゃなくて、ホントに!!」


イノリが好きだ。口では言えねえけど。

小っちゃいのも、でっかいのも、全部ひっくるめて、大好きだ。



――果たして、イノリが声を絞り出すように言った。


「すげえ……、俺、死にそう」

「な!? なんでだよ! そんなに嫌か!?」

「馬鹿、嫌な訳ねえだろ。嬉しすぎて死にそう」


あたしを軽々抱えてしまう、筋肉を纏った腕に、掻き抱かれる。
存在を確認するかのように動いた腕が止まると、切なげな声。


「ようやく、手に入れた……」

「イノ、リ……」


あたしの気持ちは、受け入れられたって、こと?
そう、だよね? そういうことでいいんだよね?
だってイノリは今嬉しいって……。