いつかの君と握手

「え、えーと。琴音に電話してみようかな」


琴音とあたしは電車通学じゃないから、駅前の情勢にさほど詳しくない。
あたし同様、琴音もこの変化に大いに驚くことであろう。
ポケットに入れていたケータイを取り出した。


「あれ、圏外? うそ」


いつもはばっちり電波が入るはずなのに、見慣れない圏外という文字がそこにあった。


「ええ、壊れたとか? まだ機種変したばっかりなのに?」


やだ、困る。旅行中、あわよくばこれで鳴沢様を視聴しようと企んでいたのに。
仕方ない。とりあえず鳴沢様については琴音か、悠美、神楽に頼んでみよう。


「頼む……にしても、誰も来ないのはなんで?」


ケータイの示す時間は、班長の集合時間を5分過ぎていた。
なのに、先生の姿すら見えない。


なんか、おかしい。
さっき一緒にいたはずの大澤も来てないし。
あたしを置いて行ったのだとしたら、とっくについてるはずだ。


「えーと……連絡つけないと、だよね」


辺りを見渡すと、コンビニ横に公衆電話が設置されていた。
あれも以前はなかったはず。
コンビニが変わったときに、一緒に設置されたんだろうか。

しかしケータイが使えない今は、有難い。

財布から小銭を取り出して、緑色の電話機に向かった。
どこにかけるべきか、と少し考えて、誰も来ていない異常性から学校にかけてみることにした。

もしかしたら、何か問題があって旅行が中止になったのかも。
あたしのケータイが不通状態だから、連絡がつかなかったんだな、きっと。


一体どうしたんだろー。
宿泊予定だった宿が急に泊まれなくなったとか、そんな感じ?
学校行事って融通が利かないから、不測の事態に適応できないのよねー、なんてね。

ケータイのメモリから学校の電話番号をだして、電話をかける。
数回のコール音がして、女性の声がした。


「あ、すみません。1-3の茅ヶ崎といいますが、親睦旅行の集合場所についたら、誰もいないんです。何か変更などあったんでしょうか?」

『親睦旅行、ですか? それだったら先週終わりましたよ』

「は?」


なんですと?


「え? あの、予定は今日でしたよね。昨日学校で最終確認しましたし、しおりにもそう書いてますけど」

『ええと、1-3でしたね? 担任の及川先生に代わりますから、お話してごらんなさい。なにか勘違いしているようだから』


戸惑った女性の声から、軽快なメロディに切り替わった。
おいかわ?
あたしの担任は森ですけど。熊みたいな。

頭が混乱する。
おかしい。なにか違う。