いつかの君と握手

「えーい、この、止まれ! ストップ!」

「…………!」

「ん?」


何か、聞こえた気がした。


「気のせい? 幽霊、じゃない、よな?」


ちょ、ちょっとー。
泣いてたからってそんなもんになぐさめられたくないんですけどー!
お気持ちだけで充分ですー!
意味もなくバッグを抱きしめて、周囲を窺った。


「……! …………!!」


やっぱり、聞こえる。
人の声、だろうか?


「え、えー? なんで? なんでこんなところで人の声がすんの?」


怖い!
こんな時間帯の山中に人がいるなんて(あたしはいるわけだが)!


「……! ……だ!?」


声はこちらへ近づいてくるようだった。
どどどどどどどどどうしよう!?

助けてって言っていいのか?
いやでも、ゆ、幽霊だったら返事したらヤバいんじゃ!?
返事をしたら魂取られる的な怪談聞いたことあるし!


「……! ……ミャオ! どこだ!?」

「ん?」


あれ?
今、あたしの名前が呼ばれた?

膝を抱えて身を竦ませていたあたしは、ふ、と顔を上げた。


「ミャオ! 返事しろ!! どこだ!?」

「イノリ!?」


びっくりした。
近づいてくる声は、間違いなくイノリのものだったのだ。
でも、どうして?
あたし、幻聴でも聞いているのだろうか?


「ミャオ!? いるのか!?」

「こ、こっち……。イ、イノリ?」


おずおずと声を上げて見れば、がさがさと草を踏み分ける音がする。
本当に、イノリなの?


「ミャオー!?」


頭上で、懐中電灯らしき光が動くのが見えた。
間違いない、イノリだ!


「こ、こっち。あの、そこ段差あるの!」

「ん? あ……っ!!」