いつかの君と握手

この足で山の中を歩き回るのは得策じゃない。
同じような箇所があれば、また落ちてしまう可能性もあるし。


「野宿、しかないか……」


ため息と共に呟く。朝になるのを待って、行動しよう。
とりあえず、ここから動かない方がいい。

自分が落ちてきた段差の部分に体を預けた。
赤土が剥きだしになったそこは、特に危険な物もない。
これならあたしの嫌いな蛇も来ないだろう。未確認性のモノに関しては、もう見ないフリをするしかねえ。


「えー、と」


メッセンジャーバッグを探って、ペットボトルを取り出した。
すっかり温くなったお茶を飲んで、一息。
それから、すこしだけ溶けたチュッパ●ャプスのチェリー味を口に含むと、その甘さに心が落ち着いた。


「あ! 琴音に電話しとかないと」


あれからずいぶん時間が立っているはずだ。
連絡しておかないと、琴音が心配しすぎて泣くかもしれん。
心配のあまり我が家に連絡、なんてことになったら大騒ぎになってしまう。


「えーと、ケータイケータ……、ない」


探し物は、何故かバッグの中になかった。


「え!? 嘘!?」


バッグの中身をひっくり返してみる。
しかし、どこにもあたしのケータイはなかった。


「な、なんで……? あ……。あああああーっ!?」


もしかして、あの時か!?
懐中電灯を探して、中身をぶちまけたあの時!

落としたのに気付かずに、置いてきちゃったんだろうか!?


「や、やばい……」


誰にも連絡できないじゃん……。
ケータイってこんなときこそ重要アイテムなのに。


「うあー、あたしって、すげえマヌケ」


どうすんだ、この状況。
とりあえずは、琴音が暴走してないのを祈るしかない。


「どーか! 暴走してませんように!!」


祈っても仕方ないが、そうでもしないと落ち着かない。
しばらく、夜空に向かって祈ってみた。

山の中で女の子一人で一体何をやってるんだろう、と我に返るまで、結構な時間、そうしていた。