いつかの君と握手

ふんわりしたシフォンのワンピース姿で、長い髪は白いシュシュで一つに纏められている。
黒縁のダテ眼鏡の良く似合う文句なしの美少女は、悪びれた様子もなく、ぺろりと舌を出してみせた。


「うん! だってほら、こういう名場面を切り取っておけるじゃない?」

「ふうん。こうやって、写真を撮っては溜めてたわけだ。大澤にあの写真の束を渡したの、君だろう?」


切り込んだ穂積の言葉に、葵ちゃんは驚いたように目を見開いたものの、にっこりと笑った。


「えー、どうして?」

「眼科での写真を外すべきだったと思うな。あれは決定的だよ」

「あー、あれかー。一番インパクトあったんだよねー。外したら勿体なくって」


てへ、と笑って小首を傾げる。
その様子は可愛い悪戯がみつかった子どものようだった。


「あ、やだ。穂積くんったらそんなに怖い顔しなくってもいいじゃない。邪魔したの、怒ってる?」

「邪魔?」


険しい顔をした穂積に、葵ちゃんは続ける。


「うん。今、いい感じのラブシーンだったでしょ。ごめんねー、美弥緒ちゃん。
ていうか、おめでとー。今さっきのって穂積くんと付き合うことになったって感じでしょ?」

「え?」

「穂積くんとなら、応援しちゃう。よかったねー」


にこにこと笑う葵ちゃん。
え? どうしてここにいるんだ?
ていうか、この場面で、何言ってるんだ?

目が点になってるあたしとは違い、穂積は状況が理解できているのらしい。
顔を顰めたまま言った。


「認めたってことはやっぱりそうなんだ?」

「隠してもしょうがないみたいだね。はーい、白状します。私の仕業です」


穂積の問いに、葵ちゃんは素直に頷いた。
頷いた? あっさり?
成り行きについて行けず呆然とするあたしの前で、二人は会話を続けた。


「目を覚ましてもらいたくて。お蔭で祈くん、美弥緒ちゃんから離れてくれたみたいだよね、よかったー」

「ふうん、やっぱり大澤を美弥緒から引き離すためだったんだ」

「だって、ありえないでしょ? こんな人、祈くんが好きになるなんて」


くすりと笑った葵ちゃんが、侮蔑を含んだ視線を流した。


「この際言わせてもらっちゃお。穂積くんの前で悪いけど、全っ然綺麗じゃないし、可愛くもないし、長所ドコって感じの超地味顔じゃない。そんなの祈くんとは釣り合わないもん。ね?」


ね? って、天真爛漫な顔で言われても、あたしはそれに素直に頷けないんですが。
同意を求める人選、間違ってますよね。

ていうか。え? なに、この毒舌っぷり。
あたしのマザーテレサだったよね? この子。
一体どうしちゃったの?