いつかの君と握手

呆然としたあたしに、穂積が言う。


「どう? 美弥緒」

「……だ」

「なに?」

「あたし、イノリが好きだ」


湧きだした感情が、勝手に口を動した。


「穂積、ごめん。あたし、イノリが好きみたい」


音になった事実は、いともたやすく心に響いた。


ああ。
あたしはイノリが、いつでもバカ正直に感情をぶつけてくるイノリが、いつの間にか好きになってたんだ。


穂積が、ふ、と不敵に笑った。


「ごめん、なんてのはいらないね。オレはそれでも美弥緒を引き寄せるって言っただろ? ここ、ゴールじゃなくてスタートラインだから」

「……へ? い、いやだってあたし今結構別方向に気持ちが盛り上がって来たところなんですけど」


あたしの今の言葉、聞いてた?
申し訳ないが、今のこの状態で穂積へ、なんて到底思えないんですが。


「悪いけど、穂積には応えられないよ」

「いいよ。逆境もまた良し、だし」


やっぱり自信ありげな穂積に首を傾げる。
この自信は一体どこからくるんだ?

そんな気持ちが表に出ていたのだろうか、穂積が愉快そうに言った。


「不思議?」

「う、うん」

「別にね、自信がある訳じゃないんだ」

「は?」

「どうして気になりだしたのか、って以前オレに訊いたでしょ?」


頷いた。
イノリにはあたしにこだわる理由もあるだろうが、穂積には全くない。
どうして急にあたしに構いだしたのか、ずうっと疑問だったんだ。


「親睦旅行の朝、覚えてる? 美弥緒、大澤に背負われて来たよね」

「うん」

「その時、声かけたよね。で、美弥緒は大澤の背中から顔を上げて、オレを見た」


はて、そうだっただろうか?
あの時のことは、混乱していてよく覚えていないのだが。


「その時の表情がさ、堪らなく魅力的だったんだよね」

「は、あ?」