いつかの君と握手

ここでこうしていても、どうしようもない。
電話番号は知ってるし、あとで電話してみよう。
必死に話せば、誤解を解いてくれるかもしれないし。

不満げな琴音をなだめつつ、校舎を後にした。


「――じゃあ、あたしはここで」

「うん、じゃーね」


あれから。お気に入りのカフェでランチとアイスを食べた琴音の機嫌はどうにか持ち直してくれた。
物騒なスプレーもバッグに沈めてもらったし、とりあえずはもう大丈夫だろう。


「気を付けてね、琴音」

「うん。あ、ミャオちゃん、ちょっと」

「ん? なに?」


あたしの横に立つ穂積を気にした様子の琴音に腕を引かれ、少し離れる。


「どうした? 琴音」

「大澤くんから、連絡あった?」

「……いや、ない」


カフェに入る前に、せめて誤解を解こうと電話をかけたのだったが、イノリは出なかった。
折り返し連絡くださいとメッセージを残したものの、未だ連絡はない。

あんなに怒っていたんだ、拒否、されているのかもしれない。


「そ、っかあ」


ふう、とため息をつく琴音に笑って見せる。


「琴音がそんなに思い悩まなくていいよ。何度か連絡してみるからさ。あんまり気にしないでいいって」

「う、ん。でも、さあ」

「いいって。なんか、気を遣わせてごめんな」

「ううん。あたしは、ミャオちゃんに元気だしてもらいたいだけだもん」


琴音は辛そうに言うが、それに驚いた。


「え? あたし、元気ない?」

「ないよう。全然ないよ!」

「そう、か?」


顔に手を当ててみる。
そんなつもりはなかったんだけど。
しかし、琴音がここまではっきり言うからには、どこか様子がおかしいのかもしれない。


「ま、まあ、そんなに気にするほどじゃないよ」


意識して、へらりと笑ってみせたものの、琴音はまだ納得がいかないようだった。
むう、と唇を引き結んでいたが、ふう、と息を吐いた。