いつかの君と握手

写真は全て、あたしと穂積が一緒にいるところを隠し撮りしたものだった。
仲良さげに見える構図ばかりで、撮った人間の目的が透けてみえるようだった。


「オレたちが付き合ってるってことにしたい、んだなあ」


誰もいなくなった教室には、あたしと琴音、それに穂積しかいない。

ぺらぺらと写真を眺めていた穂積が、ため息交じりに言った。


「で、そう勘違いさせたい相手が大澤くん、と」


琴音も、ため息をついて言う。

あたしと穂積が付き合っているとイノリに思わせて、イノリとあたしを引き離す。
それが、この撮影者の狙いではないか、と三人の意見が重なった。


「何て言うか、大澤ってすごい子にばかり好かれてるなー」


ぽい、と写真を放った穂積が苦笑する、

「呼び出しかける武闘派に、盗撮上等の知能派。いや、すごいよホント。ここまでくると、いっそ清々しいね」

「笑い事じゃないよ、穂積くん! この写真見る限り、すごく執着心のある人だと思うんだ、あたし」


琴音が通学風景の写真を指差す。
あたしの荷物や靴下などで判断したのだが、数日に渡って撮影されているのだ。・

それに気付いた時には、背筋冷えましたよ、ホント。

だって何気ない生活の中に、監視者がいたってことでしょ?
まじで怖すぎなんですけど!


フィルター越しにあたしをこれだけ見つめていた人がいると思うと、身震いがする。
こういうの、精神上よくない、絶対。


写真を見るのも怖くなって、それらを全て裏返した。
焼却炉にぶち込んでしまいてえ、こんなモン。


「ミャオちゃんの家まで写ってるし、怖いよね。どこで調べたんだろ」

「だよなあ。ていうか、穂積とあたしが一緒に登校するってどこで知ったんだろうな。
すごい捜査力なのに、生かすところ間違ってるよな」


「…………ん?」


と、穂積が写真を全て表に戻し始めた。
つぶさに確認していく。


「どした、穂積?」

「いや……、ああ、そうか」


しばらく写真を見つめていた穂積が、そういうことか、と急に笑い出した。


「な、なんだよ、穂積」

「いや、ふふ、そうか、なるほど、怖いなあ」


くすくすとひとしきり笑う。
不審げにそれを見ていたあたしと琴音に気付くと、穂積はようやく顔を引き締めた。


「犯人、分かっちゃった」