いつかの君と握手

がしかし、そうも言っていられない。

さっき、穂積には外すつもりだったと言ったが、実際のところは外せそうにない。
あたしの左目は依然、真っ赤に染まっているのだった。

こんなグロいもんひけらかして、街中歩けないっすよ。
人様にお見せできるような状態じゃないっすもん。


「ああ、そうだ。穂積、わかってるよね?」


並んで歩きながら、横の穂積を見上げた。


「はいはい。昨日のことは、秘密でしょ? その目は、物もらいってことにするんだよね?」

「そう。イノリにも言わないでね?」

「それは絶対大丈夫。あいつが噛んでくると、確実に問題が大きくなるからね。それは、嫌なんだろ?」


昨日のことは、内密の話にしてもらった。
事を大きくしたくない、とあたしが頑固に言ったからだ。


「それなら、美弥緒もわかってるよね?」

「へ?」

「美弥緒の意思を尊重したいから黙ることにするけど、その代わりにオレが傍についておく。
そういう約束だったよね?」

「あ、う」

「送り迎え、止めるつもりないから。納得しておいてね」


はっきりそう言われて、むう、と押し黙った。
いらないんだけどなあ、それ。
しかし、穂積の申し出を断るのなら、あたしを呼び出した子たちを探し出して責任をとってもらう(どうとってもらうのかと聞いたらば、どす黒い笑みを返された。それ以上訊けなかったあたしはチキンです)と言われたので、どうにも断れないのだ。

どうしたら穂積を断れるのかなあ、とちらりと様子を窺った、その時だった。
ぱたぱたぱた、と背後から足音が聞こえた。



「ミャーオーちゃぁぁぁぁんっ!!」

「ぐあ!?」


タックルをかましてきたのは、琴音だった。


「心配してお家に行ったら、おじいちゃんが男と出て行ったって言うからびっくりして追いかけてきたの!
今度は誰に呼び出されたの!? って、あれ、穂積くん?」

「こ、琴音さん……、びっくりしたんですけど……」


顔面から地面に倒れこむかと思った。
やだもう、怖い。
これ以上ヤバい顔になったらどうすんの。


「またいつ呼び出されるかわからないだろ? それにこんな目だし、迎えに行ったんだよ」

「そっかぁ。よかったあ」


ほう、と安堵のため息をついた琴音だったが、あたしの顔を見た途端、くしゃりと顔を歪めた。


「ふえええ、眼帯が何だか痛々しいよう。痛む? 痛む?」


「や、大丈夫。今はごろごろする程度だから」

「ホントぉ? それにしても、昨日連絡貰ったときは心臓止まるかと思ったよぉ」