いつかの君と握手

「一緒にいてもらいなよ、美弥緒ちゃん。
穂積くんなら、きっと助けてくれるよ? 他の女の子たちの反感を受けずに、上手くやってくれると思う」

「う……う、う……」


指があるので、唇が動かせない。
いらないんだってば。何もしなくていい。
穂積のボディガードなんてのも、いらない。

そんなことしたら、イノリに気付かれてしまうじゃないか。
何かあったのかって思われちゃうじゃないか。


うーうーと唸るあたしに、葵ちゃんは続けた。


「あと、祈くんと距離をとったほうがいいんじゃないかなあ?」

「……う……?」

「美弥緒ちゃんが祈くんと離れたら、あの子たちも満足すると思うの。だからね、距離を置いたらどうかしら?」


イノリと距離を置く……?

あたしが?


「美弥緒ちゃんは祈くんのこと、好きじゃないんでしょう? あんなにアピられてるんだもん、好きだったらとっくに付き合ってるよね。
好きじゃない相手のために痛い思いするって、嫌じゃない。
だから、離れちゃえばいいのよ」

「…………」


葵ちゃんの笑顔が何故だか遠くに感じる。


好きじゃない?
じゃあ。あたしは、イノリを、どう思ってるんだ?

小さなイノリと大きなイノリの顔が交錯する。
どちらも、屈託のない笑顔をあたしに向けていた。

その顔が、見る間に滲んで、あたしはぱちぱちと瞬きをした。
なんか目が熱い。


「……う」

「はっきり断るのも手だと思うよ? 好きじゃないから、って」

「…………うう」

「美弥緒? どうかした?」


穂積の指が離れたと同時に、叫んだ。


「うああああ! 目が、目があぁぁぁぁぁぁぁ!!」


激痛到来。
急に左目を襲ってきた痛みに、あたしは某大作アニメ映画の悪役よろしく、転がった。