いつかの君と握手

驚いたように言った穂積だったが、それでも首を横に振った。


「言い返したからって、そこまで酷く殴ったことを許すわけにはいかないね。
オレに全部任せて。美弥緒を傷つけたりしないから」

「いや、でも、いいって、ホントに。あたしもキツい言い方したんだし」


頑なに「いい」と繰り返していると、穂積がふいにため息をついた。


「……あー、そっか。ごめん」

「は?」

「ごめん、オレが急ぎすぎてたんだな。頭に血がのぼっちゃってさ。
こんなことされたんだ、怖くて当たり前だよな」


あたしがごねているのを、別の意味に捉えたのらしい。

穂積は身を乗り出して、あたしの左頬に触れた。
優しくなぞられて、はわわ、となる。

あ、あれ? なんか、空気一変した!?


「酷いことさせようとしてごめん。
考えてみれば、向こうがこれ以上美弥緒に手を出さないように、オレが傍にいることにすればいいんだよね」

「は、いや、そういうことではなかったのですが……っ」

「これから、しばらく送り迎えする。校内でも一人にさせない。
二度とこんな目に合わせないから」

「は、いや、そのそういうことは別に」


ハンターの目、キターーー!!
ダメなんだ、これ。めちゃくちゃ苦手なんだ。


こんなの死んでも慣れる気がしない。
つーか、どこでスイッチ切り替えてんだ、穂積。
そのスイッチ叩き壊させろ。


「い、いいから。そういうのいらない。平気だから、あたし」

「ダメ。オレもこれだけは譲らないよ。あんな状態の美弥緒、もう見たくないからね」

「いや、だからそ」


すう、と移動した指先が、あたしの唇に触れた。
ぎにゃ!?
きゅ、と押えるように唇の上で静止する指先。


「もう、嫌とかいらないとか言わないんなら、この指離してあげるけど?」


し、心臓が……。
もう不整脈で死ぬ、多分。
穂積に殺される。


「穂積くん? 私がいなくなってから、口説いてくれるかなあ?」


あたしのマザー・テレサが救いの手を差し伸べてくれた。
後光が、後光が射しとります!
「忘れてるみたいだけど、しっかりここにいるのよ?」

「ああ、ごめんね? でも、美弥緒が聞き分けのないこというもんだからさ」

「そうねえ。私も、穂積くんの意見には、賛成ね」


マザー・テレサは深く頷いた。