いつかの君と握手

「着替え、済んだ?」


外で待っている穂積だ。


「はーい! ええと、美弥緒ちゃん、いいわよね。どうぞ!」


幾分ましになった部室内を見渡して、葵ちゃんが言う。
次いで、穂積が入ってきた。


「どう? 少しは落ち着いた?」

「あ、うん。着替えられただけでもう十分」


へへ、と笑う。
タオルで泥も拭えたし、濡れた髪も拭けたし、本当に助かった。


「二人とも授業サボらせちゃってごめんね」


ぺこんと頭を下げる。


「そんなこと気にしないで。あ、ほら、ここ座って」


パイプ椅子を示されて、ちょこんと座った。
その真正面に、穂積が腰かけた。


「目、本当に大丈夫?」

「め?」


そういや、さっきもそんなこと言われたな。
目は何もされてないのに、と首を傾げた。


「美弥緒ちゃん、左目がすごいことになってるのよ? ほら」


手渡された鏡を覗き込んで絶句した。
し、白目が真っ赤じゃん……。

グロい! 何だかめちゃくちゃグロテスク!

あれだ。ほっぺた殴られたときに、指先で目を突かれたんだ、きっと。
おともだちを怪我させないように、爪は短く切りましょうって幼稚園の先生に習わんかったんかい。


「痛みはないの?」

「あ、いや、しぱしぱするというか、ちりちりするというか、変な感覚はあるけど……。
でも我慢できる程度だし、視覚も問題ないみたい」


よくみれば、左頬が全体的に赤らんでいた。
色白なぶん、目立っている気がする。

ああ、これは確かに穂積が動揺してしまうかもしれん。
思っていたよりも酷い有様になっていた。


「誰にやられたの?」

「へ?」


鏡から顔を上げたら、厳しい顔つきの穂積と視線が合った。


「え、えーと知らない」

「知らない? じゃあ学年は?」

「わ、わかんない」


真剣な様子の穂積に、へらりと笑ってみせた。