いつかの君と握手

「痛いトコばっかだなー……」


肩とか、尻餅ついたお尻とか、あとじんじん痺れてる顔の左側。
満身創痍ってやつ?
いや、そこまでじゃない。

あー、でも心はけっこう痛いかも。
さすがのあたしもあそこまで悪し様に言われたら凹みますよ、はは。
はー……。


青空を眺めて、ぽかんと口を開けた。
雲ひとつない空の向こうに、小さく飛行機の姿が見えた。
どこからかアブラ蝉の鳴き声がしたかと思うと、じじじ、と飛んで行く羽音を最後に消えた。
ああ、静かだなー。

ぎゅんと上昇した感情のゆり戻しがきたのか、感情が鈍くなってしまったらしい。
身動きすることもなく、ぼんやりとしてしまっていた。



どれくらい経った頃だったのか、遠くで始業を知らせるチャイムが鳴った。


間延びした音に、ようやく自分を取り戻す。
いかんいかん、と首を振って、とりあえず時間割を思い出した。

えーと、今日の一時限目は、確か化学。
ひたすらノートに字を書くだけの退屈な授業だし、サボれてラッキー。
後で琴音にノート写させてもらお、なんてな。


「しかし、どうするかな……」


これからどうしよう。
びしょ濡れのまま教室には行けないし、かといってこのまま街中を通って帰るのも問題だ。

琴音に頼んで着替えを……って、体育もないのに着替えなんて持ってるわけないよな。

乾くまで待つ、というのもなー。
いつまでここにいればいいことやら。
こんな季節だとはいえ、風邪ひいたりするんじゃないだろうか。
やだな、夏風邪って長引くっていうし。


と、こちらへ向かってくる足音が聞こえたような気がした。
ベンチにどっかりと体を預けたまま、首だけ動かしてみる。



「あ、れ……? 穂積!?」


あたしに向かって走り寄ってきたのは、穂積だった。

なんでここに!?