いつかの君と握手

が、だからといって今の発言は聞き逃せるものではない。
じ、と見据えると、彼女は動揺を振り払うように睨みつけてきた。


『なによ』

『ヤラせたってなんだ、それ』

『な、なに? 反応するってことはまじでそうなんだ。やだ、サイアクじゃ』

『最悪なのはあんたの頭ん中だろ。あんたは好きな男のことをヤリたいだけのサルとでも思ってんのか?』


ふつふつと怒りが沸く。
今のはあたしではなく、イノリに対する侮辱だ。

怒りの方向があたしに来るのなら十分理解できる。
が、イノリに向くのは何故だ。好きなんじゃないのか。


『今からイノリのところに行ってストリップして見せてやれよ。
あんたの言う通りの盛ったサルだっつーんなら、ホイホイ寄ってくると思うけど?
ついでにヤラせてやりゃ、付き合えるんじゃねーの?』

『ひ、ひど……』

『酷いのはあんただろ。ヤラせてくれるから好き、ってついさっき言ったよな?
ほら、とっとと行って、脱いでこいよ。
でもって、ヤラせてやるから付き合えって言ってこいよ』


見る間に涙が滲んだかと思うと、その子はスカートを翻して走り去ってしまった。


『あ! 理恵!』



あ。逃げた。



『ちょっとあんた!』


理恵が駆けて行くのを呆然と見ていた別の子が、いきなりあたしをどついた。
背の高い、がっちりした肩幅の子に不意打ちで突かれたせいで、よろりとよろめいた。
そこに再び大きなこぶしが向かってくる。

うえ! グーでくるの!?

肩に鈍い衝撃を受け、バランスをくずしていたあたしはそのまま尻餅をついてしまった。


『フザけてんじゃねーよ、妖怪女』

『……フザけたこと言ったのはさっきの子じゃん』

『理恵はねえ、あんたなんかのせいでフラれたんだよ!?』

『は? フラれたら何言っても許されるっての? 違うだろ』


座り込んだまま、あたしを殴りつけた女の子を見上げた。

でかいな。腕、太いな。
このまままたグーで殴りつけられたら、ちょっとヤバいな。


とか思うのに、怒りがまだ持続しているせいか、がっちり睨み返してしまう。
ああ、短気な自分が嫌!

でも、好きな相手なら貶めるようなこと言うなよ、と思うのは間違ってない。


『大澤くんに手をださないでって言ってんの、分かってる?』

『あんたこそわかってる? 「あたしは」出してないってさっき言ったじゃん。
ちょっと前のことくらい覚えとけよ』


脳内が臨戦態勢に入ってしまったせいか、ぽんぽん言い返してしまう。
反抗的なあたしに、その場にいた子たちが気色ばむ。