いつかの君と握手

笑いすぎたのか、目尻に滲んだ涙を拭って言う顔は、すごく楽しそうだった。
その無邪気な笑顔に、何故だか胸がまたちくんと痛む。
あれ、なんでだ。
今痛む意味が分からん。


「そういう気持ちがミャオにあったってだけでいい。謝ることは何もない」

「あ、あー、うん」


あれ、顔までも少し熱い気がする。
風邪の引き始めか、これ。
そういえば心臓の痛いのが、動悸に変わってきたような気もする。


「そういや柚葉さん、あの待ち受けにしてるって言ってたな」

「え、あ、うん」

「俺もそうしようかな」


ケータイを取出し、かちかちと操作するイノリ。
楽しそうな様子に、何故か心臓の動悸が連携している気がして顔を逸らした。
うー、なんだこれ。


「ほら、どうだ?」

「へ? あ、なかなかいいな。あたしもしようかな」


自分のケータイの待ち受けもあの写真に変えてみた。
かわいいイノリ(小)の笑顔がこちらに向けられている。
うむ、なかなかよいわ。


「貴重な小イノリの写真だもんなー。ぬふふ」

「貴重なのはそこじゃないだろ」

「いや、貴重だろ。ほら、こんなにかわいいんだぞ」

「俺はこの状態で笑ってる柚葉さんがすげえと思うんだけどな」

「あー、そこな。すごいよな、あの技のキレといい」

「今も夫婦喧嘩のときにはやってるらしいぞ」

「まじかー。見たいな」


イノリとケータイを向かい合わせていて、は! と気付く。

……なんかお揃いって感じじゃね? これ。


「い! いやいやいやいや柚葉さんもそうしてるんだし!?」

「な、なんだ急に」


ぎゃ! と声をあげたあたしに、イノリが驚いたように身を引いた。


「あ、いやなんでもナイデス」

「そ、そうか?」


な、なに変に意識してんだ。
深い意味はないだろ、うん。

慌ててケータイをしまいながら、動揺がバレないようにへらへらと笑ってみせる。

あれだ、あれ。話題の転換をしよう!
この話はもうお終い!