いつかの君と握手

「そういうことでいいんだよな、ミャオ?」

「あ、あうあう」

「ありがとな」


あ、うまく言葉が出ねえ。
つーか、素直にそういうこと言うなよ。
でもって、真っ直ぐにこっちを見るなよ。
そういう綺麗な瞳で見据えられると、困るだろ。


「ミャオ?」


ひどく優しい声音で名前を呼ばれた。
あたしの答えを期待している表情に、胸がちくりと痛んだ。


「……い、いや、あれなんだ。琴音には話そうとしたんだ、ホントは」


口にすると、罪悪感が襲ってきた。
あの二日間へのイノリの思いを、改めて知った気がした。


「でも、琴音はそういう科学で説明できないような話は毛嫌いするタイプでさ。
『タイムスリップした』って言ったら『ありえない』ってあっさり切り捨てられた。
信じてくれなかったんだよ。
だから話そうにも話せなかっただけ、だったりするんだ」


もぐもぐと言葉を重ねる。
どうにも、心が痛む告白をしている。


「そりゃ、このまま内緒にしとこうかなとか思わなかったわけじゃないんだ。
あの二日間はあたしにとってもすごく貴重な、大事な時間だし。
話すのがもったいない、みたいなセコいことも考えたりもした。

でも言おうとしたし、琴音がそれを信じてくれる性格だったら色々話してしまったと思う。
だからその、なんか、ごめん」


話しているうちに悪いことをしてしまったという思いが次第に強くなり、最後には深く頭を下げていた。
不快、にさせてしまっただろうか。
未遂だとは言え、自分が大切だと思っていることを、他の人に話されたら嫌だよな、やっぱり。


絶対にイノリは不機嫌な顔をしているだろうと思うと、しばらく顔を上げられなかった。
がしかし、ずっとこうしているわけにもいかない。
長々と頭を下げていたあたしだったが、おずおずと顔をあげてみた。

とそこには体を折ってくっくっと笑っているイノリがいた。


「あ、あれ? イノリ、どうした?」

「いや……なんでもない」


そう言う割には笑いが全然引かないんですけど。
なに、何か変なこと言った?


「なんだよー。これでも真面目に話したんだぞ、あたし」

「や、分かってるって。だから嬉しかった」

「は?」

「話すのがもったいない、ってそれだけで充分だ、俺は」