いつかの君と握手

「そういや、ライバルがいるんだってな、祈」

「げふ……ぉっ!?」


ゼリーがつるんと気管に入り込んだ。
反射的にげっほげっほとむせ返る。
急に何を言い出すのだ、こやつは。


「みーちゃんって面白いもんなー。そこに気付く奴がいても不思議じゃねえよ。
まあ、すげえ目ざとい奴だろうけどな。そうだろ?」

「あー、はい……まあ」


イノリの顔に、一気に陰りが差した。
これじゃあさっきの話に逆戻りじゃねーか、三津!

つーか、柚葉さん。やっぱりこいつにも話しちゃったんですね……。
いや、絶対話すだろうなとは思ってたんだ。
夫婦だしね。

それに、『妖怪と呼ばれてる』、という話をしてからの柚葉さんの食いつきっぷりったらなかったもんね。
生後間もない美花ちゃんを抱えて、クリ高に突撃してきかねない勢いだったし(穂積の顔が見たかったらしい)。
黙って自分の中に収めておけるはず、ないよね。


「まあ、でもあれだよな。そいつにはさ、みーちゃんとの運命的なものは一切ないんだから、気にすることじゃねーよなー」

「え?」


イノリが驚いたように目を見開いた。


「祈のほうが断然特別なんだぜ? 見えない力で繋がってるっつーの? オマエとみーちゃんの関係はさ、簡単に間に入れないくらいすげえんだよ」

「トクベツ、っすか」


「おう。あんな奇跡みたいなことがあったんだぞ、特別に決まってんじゃねーか。だいたいな、傍で見てたオレが言うんだから、間違いねえよ。柚葉もそう言ってたぞ」

「そう、すか……」


ばんばんと背中を叩きながら自信満々に言う三津の言葉に、イノリの表情が次第に明るくなっていく。


「どんな奴か顔を見てみたいけど、絶対オマエのがいい男だぜ!」


こいつ、一体何しに出てきたんだろう。
イノリを喜ばせるため? 意味不明。
トマトゼリーを食べるのも忘れて、三津を呆然と見つめた。


「チーフ! そろそろ……」


店の奥から、遠慮がちな声がした。
今にもあたしたちのテーブルに座り込んでしまいそうな三津に痺れを切らしたのだろう。

見渡せば、店内はピークを過ぎたとは言えどたくさんの客の姿。
遊んでる暇ないでしょ、三津チーフ。
いや、ゼリーは嬉しかったけども。


「おう、今行く! じゃあ、ゆっくりな!」


と、去ろうとした三津が、慌てて戻ってきた。


「どうしたのさ、三津」

「いや、あの写真さー、サンキュな。すげえ懐かしかった」

「ああ、あれ」