いつかの君と握手

「全くわかんない。どうやったらできるのか、なんて教えてもらいたいくらいだよ」

「ふうん。まあ、そりゃそうだよな。タイムスリップの方法なんて分かったら大発見だもんなー」

「世紀の大発見からそのまま大金持ちルートに突入できるんだけどね。でも分かんないんだ、これが」


ぷすりとトマトにフォークを刺し、口を大きく開けて食べた。
うへへ、チーズと絡んでおいしいー。


「最初はさ、タイムスリップしたことに意味があったのかもしれない、なんて考えたりもしたんだ。
でも9年前のあの時、コレだ! ということをしてないんだよねー、あたし。
一体あの2日間は何だったんだろー」

「ん? 意味付けするんなら、俺を助けてくれたってだけで充分じゃん。俺からしたらすげえでっかいことだぞ」


さらりと言われた言葉にトマトを噴きだしかける。


「だからー。助けるってほどのことしてないっつったろ、あたし」

「したっつったろ、俺」


ふ、と笑って、イノリが腕を伸ばした。
近づいてきた指先が、唇の横に触れた。


「んな!?」

「チーズ、ついてた」


きゅ、と拭うように指腹が動き、離れた。
指先についたモッツァレラチーズの欠片を、イノリはぺろりと舐めた。


「ん、んあ、あああ!?」

「なに? あ、これ旨いな」


何事もなかったかのように自分の皿を引き寄せて、食べ始める。
瞬間的に真っ赤になったあたしを見て、自分のしたことに気付けよ!
セクハラなんだよ! オマエの行動は!

いや、やっぱ見んな、気付くな。


「あのときのことを話すのってこれで2回目だな」

「ん? んあ?」


急に何だ。話題変えるの早いんだよ。


「親睦旅行以来だろ。まともにミャオと話すの」

「え、あー。……そういや、そうだな」


ふむ、と頷いた。
イノリは最近穂積と喧嘩ばかりしてるから、まともに話してなかったんだよな。
周囲の目もあるから、二人で話す時間もとれなかったし。


「田中が邪魔なんだよな」


イノリも同じようなことを考えたらしい。顔を歪めてふん、と鼻で笑った。


「あー、と、そうだ。イノリは穂積と小学校の頃から同じクラスなんだって? せっかくの縁なんだし、仲良くしろよ」

「なんで。俺あいつに興味ねーもん。つーか、訊こうと思ってたんだけどさ、なんで田中のこと名前で呼んでんの?」

「へ? ああ、名前で呼んでくれって言われたから。断る理由もなかったし」

「ふうん」