いつかの君と握手

★本日のランチメニュー★

夏野菜と雑穀米のリゾット
採れたてフルーツトマトのカプレーゼ
シェフ自慢の特製スープ
とろとろプリンのキャラメルソースかけアイス添え
エスプレッソ


ぷりぷり海老、とっくの昔に終わってた……。


「ちょっと悲しい……、でも米おいしい……」


たくさんの観葉植物と、大きな天窓のお陰で明るい店の片隅。
イノリと向かい合うように座ったあたしは、小さくぼやきながらスプーンを口に運んだ。

海老、食べたかったなー。

けど、米好きとしてはリゾットもたまらんとです。
とろとろのご飯ってどうしてこんなにも美味しいんだろう。
つーか、雑穀米、いい。うちのご飯もこれにしたらいいのに。


「ここに、海老のクリームパスタってあんじゃん。ランチじゃなくてこれ頼んだらよかったんじゃね?」


ほれ、とイノリがメニューを差し出した。それをちらりと見る。


「そっちのはトマトじゃなくてホワイトソースだもん。それにリゾット好きだし、ランチ限定のデザートも食べたかったし、こっちのがいい。
だってさー、プリンとアイス、両方食べれるなんて嬉しいよなー」

「ふうん。じゃあ俺のもやる」

「は? イノリが食べればいいじゃん」

「甘いものはあんまり食わない」

「は!? あんなに美味しいっつってチョコ食べてたじゃん!」

「ガキの頃の話だろ。今はほとんど食わねえよ」

「ぬ、ぬわ」


口の周りにチョコつけて、『これおいしい!』なんつってたイノリがそんなこと言うなんて!


「あ、あんたおっきくなったねえ。いつの間にかいっちょまえになって、まあ」

「おい、近所のオバサンみてえなこと言ってんぞ」


ぶ、とイノリが噴き出した。


「だ、だってさー、こないだはチョコでもアイスでもがつがつ食べてたじゃん」

「そりゃ、あのときはまだ小さかったしな。つーかミャオ、こないだじゃなくて9年前だ」

「9年前なのかもしれないけど、あたしにはつい数日前だもんよ」

「あー、そっか。ミャオにはそうなんだよな」


ああ、とイノリは頷いた。


「それ、今でも不思議なんだよなー」


ふむ、と腕を組む。


「疑ってるわけじゃないんだぞ? ミャオの態度見てたらマジな話だってのは分かるんだ。けどさー、こう、納得いかねーっつーかさ。
どうやってタイムスリップしたのか、わかんねーの?」