『そんなことよりさ、みーちゃんは9年ぶりの祈くんとの再会はどうだった? 感動的だった?』


柚葉さんの好奇心は、あたしとイノリに注がれているのらしい。
瞳がキラキラしている。


『いや、感動的かどうかは……。というか、展開がすごすぎてついていけなかったっていうか』

『なになに、展開って。なにがあったのよ?』

『はあ、実は……』


親睦旅行のグラウンドでの一件を、恥ずかしさを覚えつつ(あんなこと、平気で人様に話せるもんじゃない)語った。
多少、言えなかった部分もあるが、仕方ない。
口にできることと、できないことがあるのだ。

しかし、それでも柚葉さんには興味深い……いや面白い話だったようだ。
俯いて、真剣に耳を傾けてくれているかと思いきや、爆笑していた。

そして冒頭の、笑いの引かない柚葉さんに呆れるあたしに戻る、というわけだ。


「――いい加減、笑うのやめてくださいってば」

「あはは、ご、ごめん。だってなんていうかすごく、楽しいんだもん」

「楽しくないですよ!」


ぶう、と頬を膨らませると、柚葉さんは目尻に滲んだ涙を拭いながら呼吸を整えた。


「楽しいし、嬉しいのよ。やっと祈くんが報われるんだなーって思うとさ」

「え、報われるって?」

「9年間ずーっと想い続けてた子に、ようやく会えたわけじゃない」

「ちょ! そういう言い方は……っ」

「あら。だって本当のことだもの。祈くんは、あれからずっとみーちゃんが好きだったのよ?」


当たり前じゃない、と言い足した柚葉さんの言葉に赤面する。
うう、くそ。こんなのってダメだ。どうしていいのかわかんない。


「祈くんもそう言ったんでしょ?」

「う、いや、まあ、そうですけど……、でもあの、今いち受け入れられないというか」

「信じられないの? でも、本当よ。いつでも、口を開けばミャオミャオってうるさいくらいだったし」

「う……」


イノリ(小)なら微笑ましく思えるし、ありがとー! と言えるのだが、(大)となると途端に心が熱をもつのは何故だ。
うあ、どういう反応してたらいいんだ、この。
勝手に赤くなる頬をべちんと叩いた。


「そんなに想っていた子は、行方不明状態で連絡一つとれなかったでしょう?
祈くんにしてみれば、いつ会えるのかも分からなかったし。
しかもやっと会えたかと思えば『知らない』なんて言われたわけよね。

あ、聞いてるわよー。祈くんをすごい顔で睨んでたらしいじゃない?」

「んな!? なんでそんなこと知ってるんですか!」


思わずのけぞったあたしを見て、柚葉さんが悪戯っぽく笑った。


「祈くんが高校に入学した時から、ヒジリと色々詮索してたんだもーん」

「な!? 詮索ってなんですか!?」