いつかの君と握手

「ミャオがどんな生き物でも、どんな事情があってもいい。約束通り、記憶の中の姿そのままで俺の前に現れてくれたんだって、嬉しかった。

でもまあ、それからは訳わかんねーって感じだったけど。
ミャオは俺を知らないって言うし、睨んでくるし。
そういやあの視線、すげえ凹んだ。殺す! って感じだったもんな」

「う……、すみません……」

「いや、本当に知らなかったんだから、いいけど。でもアレはもう二度といらない」

「う……ハイ」


あー、殺視線なんて出すんじゃなかった。
後悔ばかりだ。
あ! これが人を呪わば穴二つってやつ?
いやちょっと違うか?

身を小さくして謝ったあたしの頭に、ぽすんと手の平がのった。


「な、なに?」

「俺、9年間ミャオのこと忘れたことなかった。ミャオよりでかくなったら会えるって馬鹿みてーに信じてた。
またミャオに会えてよかった」

「う、うん。そっか、はは」


曖昧に笑って、俯いた。

な、なんだこれ。
どうしてこいつがあたしの頭撫でてんの?
撫でるのはあたしからのはずでしょ、ってこんなにでかい男を撫でるのか?
なんで一気にあたしを追い抜いてんだ、イノリ。
じゃなくて!
なんだこのふんいき!


むずがゆい! なんだかすごくむずがゆい!


頭を撫でる手が、ふ、と止まった。
お、ようやく手を離してくれるのかな、とちらりとイノリに顔を向けると、ばちりと視線が合った。
色の変わった眼差しに気付く。


「イノリ、どうかし……」

「ずっとミャオが好きだった。6歳のガキだった頃から、今でも、想いは変わってない。
だから、もう俺の前から消えて欲しくない。

利子でもなんでも、ミャオとの繋がりができるのなら、それでいい。
俺を一生縛るくらいの利子、つけろよ」


時が、いや、心臓が一瞬止まった気がした。

熱を帯びた視線。
怒ったような口調で紡がれた言葉が、リフレインする。

『好き』って、嘘? 冗談?
でも、そんなからかいめいた様子は微塵もなくて。
むしろ、本心かもと思えるくらい、真摯だった。

え? でも、そんなはずないよね。まさか、だよね?


「ほ、本気で言ってたりしない、よね? す、好きとか、そういう、やつ」

「本気でミャオが好きだ」


動揺してどもりながら訊くと、簡潔な答えが返ってきた。


「嘘とか冗談じゃないから、疑ったりすんな。
あと、9年間ずっと気持ちは変わらなかったから、勘違いというセンもない。
余計な混じり気なしに、好きだ」

「あ、う」


思いついた可能性も、あっさり潰された。