いつかの君と握手

「あー。三津たちにはタイムスリップした時間のこととか詳しく話してたから。
だから、ちゃんと帰ってこられたかどうか、確認に来てくれたんだと思う」

「そっか」


それから、またもや沈黙。
受け入れがたい話だろうし、整理するのも時間がかかるんだろう。
もう少し黙っておくとするか、と夜空を仰いだ。

うわ、星が綺麗だなー。
森の中で見上げたあの空と同じだー。
やっぱこういう自然が多いところって星が綺麗に見えるなー。

と、視線を感じて横をみれば、イノリがあたしを見下ろしていた。


「なに?」

「その足さ」

「うん?」

「もしかして、俺を見つけたあのときのやつ?」

「ぬわ」


うえ。気付いたのか、それ。
できれば忘れていて欲しかったのに。
かっこ悪いじゃん。『とう』なんて言って飛び降りたのにさあ。

口ごもっていると、イノリは被せて訊いてきた。


「そうなんだよな? あの時のミャオは足挫いてたもんな。今朝、オヤジも三津さんも怪我のこと知ってる感じだったし、そういうことだよな?」


忘れろっつーの。
9年前の話を穿り返すなっつーの。
って、今までその話がメインだったんだけどさー。
でもそこはもういいんだって。


「ミャオ? どうなんだ?」

「……まあ、そんな感じかも、ね」


しぶしぶ認めた。


「かっこつけて飛び降りたらさー、ちょっと足捻ったんだよ。体がなまってたみたいでさ。あれくらい平気だと思ったんだけどなー」

「……そのあと俺を背負って歩いただろ。あれで悪化したんじゃないのか」

「へ? い、いやそれくらいは問題ないって。つーか、あの時のイノリって軽かったし」

「だからって負担にならねー、なんてことはないだろ。足、すげえ腫れてたじゃねーか」

「う、まあそれは確かにそうかもしんないけども……」


そういえばこいつ、川上先生に診てもらってるときに近くにいたんだっけ。
アレを見てたのか、やっぱり。


「でもまあ今はもう平気だし。そんなに痛まないし。
だから、かっこ悪いとか今更笑うのはナシね」


あー、恥ずかしい。
だっせー、なんて思われてないだろうか。


「かっこわりぃ」


視線を泳がせていたあたしに、イノリはぼそりと言った。


「んな!? 言われなくても分かってるってば! 傷口をえぐるようなこと言うなよ!」

「いや、そうじゃなくて。かっこ悪いっつーのは、俺」

「あ?」