いつかの君と握手

う、うまい!
イノリの説明は、あたしの心に光明を差した。
これなら違和感のない話だよね!


「ミャオちゃん!」


人ごみを掻き分けるようにして、救急箱を手にした琴音が現れた。
おおおおおお、すんごく久しぶりに会った気がする!
ああ、ほっとするー。琴音ー。


「保健係、あたしなの! 大澤くん、ミャオちゃん降ろして」


近くにあったベンチに移動し、そこに降ろしてもらった。


「うわあ、すんごく腫れてるよ。これは歩けないよねえ」


あたしの足首を確認した琴音が、自分の怪我のように顔を歪めた。


「うわ、本当だ。オレ、保健の先生呼んでくる。琴ちゃんだけじゃ手当ては難しいだろ」

「ありがと、穂積くん」


足を覗き込んだ穂積が、同行の保険医を呼びに走って行った。


「ミャオちゃん、この湿布はどうしたの?」

「え? ああ、たまたま持ち合わせがあったんで、貼ったんだ」

「ふうん、用意がいいねえ」


感心した琴音に、まあね、と曖昧に笑っておく。
と、すぐに保健の川上先生を連れて穂積が戻ってきた。

恰幅のいい、にこやかなおばちゃんの川上先生は、どっこいしょ、と座ってあたしの足を確認した。


「あらら、ずいぶん腫れてるね。どうやったらこんなことになったの?」


2mほどの高さから飛び降りました。
不覚にも、着地を失敗したんです。
……なんて言えるはずがねえ。

さっきのイノリの説明に合わせた。


「ここに来る途中に盛大にこけてしまって……。そしたら足を捻ったみたいで」

「よっぽど派手に転んだんだねー。で?」

「歩けなくてどうしようかと思ってたら、イノ……大澤が通りかかって、それでここまで連れてきてくれたんです」


この説明は、周囲で聞き耳を立てているその他大勢にも聞いてもらえるように大きな声で言った。
単純なことなんですよー。
あたしは怪我人、イノリは心優しき通行人、それだけなんですよー。


「そりゃよかったねえ。えーと、大澤ってアンタだよね? 女の子をきちんと助けるなんて、偉い偉い。かっこいーねえ」

「別に……、無視してくわけにもいかないだろ」


手放しに誉めた川上先生に、ぷいと顔を背けたイノリが面倒くさそうに言う。


「痛がってたし、仕方なかったんだよ」


まだ機嫌が悪いらしい。
口調がいつにも増してぞんざいだった。

むう、そんなに怒ってるなら、おんぶしてくれなくてもよかったのに。
いや、怒らせたのはあたしだけどさー。

しかしその態度が、殺気立っていた女の子たちの心を静めたらしい。