いつかの君と握手

みんなのどよめきも、驚愕の顔も、神楽の叫びも、
全部全部、あたしがイノリにおんぶされてるからじゃないのか!?

遅れてきた挙句、イノリに背負われて登場すりゃ、そりゃ目立ちまくりだろうが!


「急に叫ぶなよ、なんだよ」

「お、お、お、下ろして! すんげえ目立ってるから!」

「痛いくせに何言ってんだよ。無理すんな」

「足も痛いけど視線もめちゃくちゃ痛いんだって! わかれよ!」

「わかんねえよ。人を気にしてどうすんだよ」

「これだけ見られてたら普通するだろ!」

「俺はしねえよ! つーか動くな!」


暴れるあたしにお構いなしに、じろじろと不躾な視線を寄越す生徒達の中を突っ切っていくイノリ。

うあー、恥ずかしさで死ねる。
もうきっと死ぬ。
つーか何でこいつこんなに平然としてんの?
こんなに視線集めて平気なわけ?


「美弥緒!? どうしたの!?」


イノリの背中に顔面を押し付けて、現実をシャットアウトしたつもりだったが、残念、聴覚は遮れていなかった。
大きくなっていくばかりのざわめきの中で、一際大きな声で呼ばれた。


「美弥緒ってば! どうかしたの?」


穂積だ!
認識すると同時に、ぽんと背中に手の平の感触があった。
おずおずと顔を上げたら、そこにはびっくり顔の穂積がいた。


「…………っ。
ええと、あー、来ないから心配してたんだけど……どうしたの?
どうして大澤に背負われてるの?」


信じられない、といった様子で問われた。


「ああ、うう、その、何といいますか」


うひー。言い訳が思いつかない!
すっかり混乱してしまっていて、口からは意味のない言葉ばかりが出てくる。

しかも、穂積の後ろに何人もの女の子がいて、彼女たちの視線が毒針のようにキッツイのも、動揺に拍車をかけた。
目が合えば、あたしがイノリにぶつけたそれ以上の気迫で睨まれる。

ちちちちちち、違うんです!
なんかその、変な勘違いしないでください!

つい、数日前のクラスの女の子たちの怒号を思い出してしまい、震える。
アレより酷い事態になってしまうかもしんない。

あの視線のギラつきは、ハンパじゃねーもん。
うあー、怖いよー。


「こいつが足挫いて動けないっつーから、拾ってきたんだよ」


怯えていると、イノリが大きな声で言った。
す、救いの手? 救いの手ですか?


「え? 美弥緒、足怪我してるの?」


穂積の視線が、あたしの足元に向けられた。


「バス停のとこでうずくまってたから、連れてきてやったんだよ。ウチの班の保健係って誰? いや、保険医でもいいから、誰か診てやって」