いつかの君と握手

「じゃあ行ってくる」

「ああ。彼女をよろしくね、祈?」

「なんでオヤジが言うんだよ。じゃあな」


あっさりと会話をすませ、すたすたと歩き出すイノリ。


「気をつけてね、美弥緒ちゃん」

「は、はぁい……」


勝手に赤面してしまう顔を背中で隠して、加賀父の言葉に返事だけ返した。


「班長は点呼後、委員長に報告! 委員長は担任へ!」


拡声器の声が次第に大きくなる。

は!
あたしの班、誰が点呼とってるんだ!?
穂積? いや、琴音?


「は、早く行かなきゃ、イノリ」

「大丈夫だろ、多分田中か柘植辺りがうまくやってるだろ」


焦るあたしにお構いなしに、のんびり歩くイノリ。
そうかもしれないけど、迷惑になるじゃん!
急げよ! と頭の一つでも叩いてやりたいが、背負われているという負い目がある手前、できるはずもなく。
どうにも居心地のよくない場所で、うぬぬぬ、と唸った。


……ん?
何だか周囲が騒がしい。


まあ、こういうイベントでの集合時間っていうのは総じて騒がしいものだけど、何というかそれとは空気が違う気がする。
あっけらかんとした、休み時間のような気楽な騒がしさではなく、かといって非日常ゆえの躁状態という感じでもなく。

興奮気味というか、騒然というか。

はて?
もしかしてあたし、またタイムスリップしてしまった、なんてことはないだろうな?
そんなことになってたらショック通り越して、泣きそうなんですけど!
か、確認しなくちゃ。
恥ずかしさで俯いていた顔をこわごわ上げた。

……見慣れたいつもの駅前広場、だよね?
コンビニはロー●ンだし、天然酵母のパン屋さんもある。

うん、間違いない。


なにより周囲には見覚えのある顔もあるし、ほら、あそこにはクラスメイトたちの驚いた顔が………。


はて? 驚いた顔?


よくよく見れば、みんなこちらを指差して、驚愕している様子。
神楽があからさまにこちらを見て叫んでいたのが見えた。


「なんか、うるせえ……」


イノリが小さく呟いた。


「ほんと。なんでだろ……うね……って! うあああああ!」


こんな衆人環視の中、何をぼんやりしてんだ、あたし!