いつかの君と握手

「無理」

「はあ? 無理ってなんだよ、おい」

「だってイノリにおんぶされるなんて無理だし! あたしはおんぶするほうだし!」

「馬鹿か! 怪我人はオマエだろうが。歩けねーんだったら素直におぶされよ!」


ついさっきまでおんぶしてた子に逆におぶわれるなんて、なんだかすごく恥ずかしいじゃないか。


「あたし歩けるから平気だし。ほーらね? っていってぇぇぇ!」

「痛えんだろ? 大人しく乗れ」


立ち上がりかけて、再びダウン。
むう、痛い。けど、おんぶされたくない。


「む、無理ー。それはなんだか受け入れられない」

「はあ? いいから乗れ!」

「やだ! 無理!」


口論状態になっていると、いつの間に車から降りたのか、加賀父が隣りにすい、と屈んだ。
耳元でそっと囁かれる。


「美弥緒ちゃん、俺が集合場所まで運ぼうか? お姫様だっこで」

「んなっ!?」

「それとも……このまま病院に行こっか? 診察室まで抱いていきますけど?」


そそそそそそそんなの、死んでも無理!
ていうか、死ぬから無理!
ぶんぶんと首をもぐ勢いで横に振る。


「じゃあ、大人しく祈の背中に乗りなさい。それから、後できちんと手当てを受けないとダメだよ。君は女の子なんだから、体を大切にしなさい」

「う……」


この人には敵わない。
恥ずかしさで赤面しながらも、こくんと頷いた。


「おねがい、します」

「早くしろ」


「クリスチーネ豪陀高校! 生徒は集合! 班長は点呼開始!」


言ったものの、ちょっと躊躇っていると拡声器で先生の声が響いた。
時間になってしまったらしい。


「間に合わねーぞ」

「うあ、お、お願いします!」


これ以上はごねていられない!
イノリの背中に乗った。

予想外に大きく、広い背中。
ええ、イノリってこんなに大きくなったの!?
って、大澤は最初から大きかったけどっ。

でもイノリだし。
いやでもイノリはちっちゃくって、こんなじゃなくって。
ああ、なんだか思考回路がショートしそうだ。

あたしの動揺にはお構いなしに、イノリはひょいと立ち上がった。
バッグまで持っているというのに、よろける様子もない。
うあ、こんなに力強くなっちゃったの?
あたしを背負ってるのに、平気なの!?